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菱川 和翁(ひしかわ わおう、生没年不詳)は、江戸時代初期の浮世絵師。
和翁は、菱川師宣の門人。姓は桑原氏。名は不詳。師薫、和応、風養軒、艶屈などと号す。画姓として、菱川を用いている。遊印を使用していることから、それなりの出自、教養を具えていたと考えられる。また菱川の画姓を使用しているので、師宣に直接教えを受けて姓を許可されたのかもしれない。
本所に住していたが、山口宗倫の記した『百人男』に連座し、元禄4年(1691年)10月、日本橋より五里四方追放になっている。その後の消息は不明である。作品は、元禄期の肉筆画10点ほどが確認されており、全て、晩年の師宣様式の美人風俗画で、相当の力量があったと想像できる。
代表作として、「美人物思い図」(ニューオータニ美術館所蔵)、「花下観桜図」(奈良県立美術館所蔵)などが挙げられる。「美人物思い図」は秋草と風景を描いた6曲屏風の前で、抱き茗荷の紋と蔦の葉をあしらった大模様の小袖を身に纏った女性が脇息にもたれているところを描いており、懐手の彼女の脇には梅の枝花を生けた花器が置かれている。
また香炉も描かれており衣服や髪に香を焚き込める身拵えを終えたあたりと見える。屏風の右端には「大和畫菱川陰子和應圖」の款記があり、その右方と末尾にそれぞれ印が捺されている。