全国の美術館の情報や絵画・彫刻・アートなど芸術作品と画家・作家の紹介
弄春斎 栄江(ろうしゅんさい えいこう、生没年不詳)は、江戸時代の浮世絵師。
栄江は、鳥文斎栄之の門人。姓名不詳。 寛政-享和期の肉筆浮世絵数点が知られる。
主要作としては、「桜下二美人図」(東京国立博物館所蔵)、「路上の娘と小僧図(一女一童図)」(東京国立博物館所蔵)、「桜下歌詠む遊女図」(日本浮世絵博物館所蔵)、「美人図」(東京藝術大学大学美術館所 蔵)、「梅窓美人図」(京都府立総合資料館所蔵・京都文化博物館管理)などが挙げられる。
「桜下歌詠む遊女図」は桜下のもと、太い黒の襟付きの赤い鹿の子絞りの小袖をしどけなく着、水色のしごきを大きく前に結び、仕掛けを羽織った花魁を描いている。短冊を手にすらりと立ったその姿は客に向かう正装姿とは異なる長閑さを感じさせる。
後ろに垂らした黒髪の端を赤い布で纏め、京坂の色里で流行した二枚櫛、8本の笄で飾り立てたヘアスタイルも面白く、鼻筋の通った、やや吊り上がり気味の眼の描写が彼女の美しさばかりでなく、気性の激しさも表しているように思われる。
栄江は、その激しさを和らげるためか、顔や手足の描写に肉色の線を使用している。落款は「弄春斎栄江畫」とあり、「一女一童図」の落款と筆使いが極めて似ている。さらに「榮江」の朱文方印も同一のものであるが、「桜下歌詠む遊女図」の方が丁寧な作であり、また着彩にも優れた点が見られ、栄江の代表作といえる。