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鳥喜斎 栄綾(ちょうきさい えいりょう、生没年不詳)は、江戸時代の浮世絵師。
栄綾は、鳥文斎栄之の門人。姓名不詳。寛政-文化期に、鳥文斎栄之風の肉筆美人画「納涼美人図」(ニューオータニ美術館所蔵)1点と、寛政7年(1795年)刊行の狂歌本「狂歌歳旦江戸紫」(万亀亭花の江戸住撰)の挿絵が知られる。
「納涼美人図」に描かれている美人は、栄之の影響が強く感じられ、鳥居清長の八頭身美人にも劣らぬものだが、より繊細かつ優美である。右手に京団扇を弄び、左手を胸先にして団扇の飾り紐を支え、長い振袖を翻して悠然と立っている。
その上目麗しく遥かな方を眺め見つめる姿がか細く美しい。紅衣の襦袢が薄物に透けて見え、白緑地の帯に映えて若やぐのであるが、その肉線は弾力的で細く、むしろ女性的な筆致をしのばせる。その美人の顔立ちに栄之の若書きとされる上目遣いに目尻の上がった風貌の絵との共通性が見出せる。
しかし、栄之のそれと全く同じではなく、栄綾の洗練の極みといえる名幅である。この「納涼美人図」の落款は、「鳥喜斎榮綾画」、印章は、「榮綾」(朱文方印)である。