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至信(ししん、生没年不詳)は、江戸時代初期の浮世絵師。
姓は不詳。明和(1764年-1772年)年間の頃に、主として鈴木春信あるいは川又派風の肉筆美人画を描いた。至信はその繊細な表現で四季の花を添えた男女を描くことを得意としたとされ、彼の作品は夢幻的な美しさを感じさせる。
「見立玄宗図」は、桜下の床机に座って寄り添う男女二人が一管の笛を持ち、それを女性が吹き、男性が笛穴の開閉に加わっているところを描いている。これは、唐の玄宗皇帝と楊貴妃との歓楽の様子を当世風に表現したものである。この図に描かれている女性の髪の張り具合などから考えても、明和年間の作品であることが窺える。
至信の読み方については、従来のように、「ししん」としたが、あるいは、「よしのぶ」、「のりのぶ」、「ゆきのぶ」、「みちのぶ」または「むねのぶ」と訓読みにするのが本来の読み方かも知れないと思われる。「美人遊猫図」が掲載されている『風俗画と肉筆浮世絵』の巻末の作品リストの表には、「田中至信」と記されている。