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鳥高斎 栄昌(ちょうこうさい えいしょう、生没年不詳)は、江戸時代中期の浮世絵師。
栄昌は、鳥文斎栄之の門人。別号に昌栄堂。姓名不詳。 作画期は寛政5年(1793年)・6年(1794年)から寛政11年(1799年)で、錦絵、黄表紙の挿絵、肉筆浮世絵数点が知られる。
錦絵では、喜多川歌麿風の美人大首絵が約二百点ほど知られている。代表作としては、版元山口屋忠助から版行した寛政7年(1795年)から寛政8年(1796年)の作とされる錦絵「郭中美人競」、「当世美人合」、肉筆「蚊帳美人図」(光記念館所蔵)、「隅田川図巻」(浮世絵大田記念美術館所蔵)などが知られる。
錦絵「若那屋内白露図」(東京国立博物館所蔵)に、「昌栄堂栄昌」の落款が見られる。また、寛政10年(1798年)に、黄表紙4点の挿絵を描いている。
肉筆「隅田川図巻」は栄之が好んで描き上げた世界で、男性客二人が両国浜町河岸で猪牙舟に乗り、隅田川の流れに逆らって山谷堀に到り、ここから駕籠に揺られて土手を八丁、新吉原大門口に着き揚屋で歓楽する場面までを描いている。
この図巻の末尾に「榮之翁筆 応需栄昌筆」とあり、栄之が描いた「隅田川図巻」の1本から需めに応じて栄昌が模筆したものであることがわかる。従って、栄之の構成をほぼそのままに辿り、彼の筆法を遵守しているのが窺える。
しかし、両者の間には差異も見出せ、栄之筆の作品が皆、緻密に描出され彩色も丁寧であるのに対し、この図巻では総体にあっさりと、色彩も墨を基調とし灰緑、藍、黄土色を主に紅を効果的に使用している。いわゆる淡彩作品であるが、筆線は確かであり、そこから醸し出される風趣は栄之と同様で清麗である。
また、この作品が栄之作品の模作であったとしても直模では無く、栄昌自身によって作為された部分が認められ、全体的にも作者の神経が行き届いて優れた纏まりを見せている。