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古山 師政(ふるやま もろまさ、生没年不詳)は、江戸時代の浮世絵師。
古山師重の門人。古山師重の子。姓・古山、名・新七郎、または新九郎。初めは、菱川昌則といい、月々堂、文志、文翅とも号した。画系は、菱川系であったが、その描写はより平俗で師宣風ではなく、繊細かつ色彩は濃厚で、筆致はとても細やかである。
どちらかというと、同じ時代に活躍した奥村政信や西村重長、石川豊信のような、この時代の江戸絵の様式を基調にしたうえで、師政自身の個性を出した絵を描いた。
宝永-延享期(1704年-1748年)に、柱絵や大判漆絵、浮絵、肉筆美人画を残している。現在までに、墨摺絵、丹絵の他に、柱絵2点、浮絵2点及び肉筆画10点ほどが確認されている。
大判墨摺絵の「吉田街道」(東京国立博物館所蔵)、丹絵「新吉原座敷けんずもふ」(東京国立博物館所蔵)、漆絵「新吉原座敷けんすもふ」(東京国立博物館所蔵)は良く知られている。
肉筆画の代表作として、「梅下美人図」(紙本着色・東京国立博物館所蔵)、「踊りの稽古図」(紙本着色・東京国立博物館所蔵)、「男女図」(紙本着色・東京国立博物館所蔵)、「舟遊図」(絹本着色・出光美術館所蔵)、「巳屋店先図」(紙本着色・浮世絵太田記念美術館所蔵)、「玉の輿図」(紙本着色・MOA美術館所蔵)、「立ち美人図」(紙本着色・光記念館所蔵)、「蚊帳美人図」(紙本着色・奈良県立美術館所蔵)、「湯上がり美人図」(紙本着色・奈良県立美術館所蔵)などが挙げられる。
「踊りの稽古図」は赤々と炭火の燃える火鉢を挟んで二人の歌妓が踊りの稽古をしているところを描いている。一人は三味線を弾き、もう一人はその音に合わせて扇を手に軽やかに踊っている。障子の開け放たれた縁側からは梅の花が咲く庭が見え、未だ春も浅い頃のしっとりとしたひと時を写し出した一幅である。
吉原の大座敷における遊興の光景を描いた横大判の漆絵「新吉原座敷けんすもふ」は当時流行した透視遠近法を用いた浮絵となっているが、同じ室内空間を描いたものといっても、その範囲が小さく制限された肉筆画「踊りの稽古図」においては、伝統的な俯瞰描写が行われている。
本図に描かれた女性たちの容姿は随分と小柄でまるで少女のような雰囲気さえ漂わせている。これは宝暦・明和期の美人画に見られる可憐さに、自然につながってゆくような美人画風である。
また、「巳屋店先図」に描かれている遊女と禿の鋭い目付き及びピンと跳ね上がった髱(たぼ)に、師政の特徴が良く表現されており、彼が、菱川派最後の絵師といっても差し支えないといえる。