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梅祐軒 勝信(ばいゆうけん かつのぶ、生没年不詳)は、江戸時代初期の浮世絵師。
正徳(1711年-1716年)から享保(1716年-1736年)期に、懐月堂派風の肉筆美人画を描いた。絵の様式と、画号及び落款書体の類似から、梅翁軒永春と同系の絵師と考えられる。
遊女の立姿図が多く、細面の品のある顔立ちで、なで肩であるが、衣装の線は大振りで、甚だ量感に富んでいることを、特徴として挙げられる。しかし、永春のような幅の広さは見られない。
勝信の美人画に、遊女が、腰掛けて髪を直す同じ構図の美人画が3点知られているが、顔の表現においては、「縁台美人図」と「立姿美人図」が最も酷似しているといえる。
「煙管持つ蚊帳美人図」は、蚊帳の中にいる遊女に、禿が文を差し出している所を描いているが、透き通った蚊帳や、夏の衣服を表現するのは、油彩画ではできない。これだけは、東洋画のみで、かなりの技巧を必要とするものである。
また、蚊帳上部のつる部分の赤い色が淡彩な画面を印象付ける効果を示している。落款に、「日本畫」と冠している。勝信も、懐月堂派の末流であるが、享保の頃となると、初期のものとは異なり、力強さ、筆致の雄勁さは、もうなくなっており、あの独特の肥痩の激しいタッチは窺われない。全体に、流麗な描線で表現されている。