水野廬朝

水野 廬朝（みずの ろちょう、寛延1年（1748年） - 天保7年1月22日（1836年3月9日））は、江戸時代の旗本、浮世絵師。

来歴

北尾重政の門人である。姓・水野、名・元敬または元敏、後に元休。通称・小十郎。隠居後は卿山と称す。長丘散人聰卿、水廬朝、鳥巷斎、路眺、路てう、清線館、攀鱗斎（はんりんさい）などと号す。

1450石取りの旗本の家に生まれ、浅草鳥越町に住み、自宅を「清線館」と名付けていた。北尾重政に浮世絵を学び、谷素外について、俳諧を学んでいる。

明和5年（1768年）12月に、西丸御小姓となり、安永8年（1779年）4月、本丸に移り、天明元年（1781年）5月、再び西丸に戻り、寛政5年（1793年）1月から御使番、寛政8年（1796年）6月から大坂御目付、享和4年（1804年）1月から御先手御鉄砲頭、文化13年（1816年）3月から西丸御持筒頭、翌文化14年（1817年）7月から新番頭の役職についた。そして、文政7年（1824年）2月晦日をもって辞職している。

廬朝は、こういった幕府における公務の合間に、俳諧をたしなみ、浮世絵美人画を描いたのである。寛政5年（1793年）、俳諧本「世吉之物競」3冊、寛政8年（1796年）、絵本「多能之美種」3冊を記した。

作品は、これら僅かな版本の挿絵以外は、全て肉筆美人画であった。天保7年（1836年）、病没。法名は元休院釈遊法卿山大居士。享年89。

寛政-文化（1789年-1818年）末年にかけて、鳥居清長風の肉筆美人画を描いているが、旗本という身分であったため、大半が、絹本に極彩色を施し、絵絹は当然ながら、絵具も良質な最高級のものを使用しており、その作品に描かれている美人の着衣の模様、周辺にある調度の類も、細密で華麗な雰囲気を感じさせる独自の様式を打ち出している。

天明末年の頃の「桜下美人図」は、北尾派風が見て取れるが、「美人文読み図」や「向島桜下二美人図」においては、歌麿や豊国の美人画と共通するような、面長な瓜実顔に、長身のプロポーションの美人が描かれている。

代表作

• 「桜下美人図」 天明末年-寛政期 紙本着色・東京国立博物館所蔵 「水聰卿戯画」落款 「狂画」朱文長方印 「元敬之印」白文方印
• 「美人文読み図」 寛政後期-享和 絹本着色 ニューオータニ美術館所蔵 「鳥巷斎路眺」落款 「戯画」朱文長方印 「清線」朱文方印
• 「向島桜下二美人図」 享和2年（1802年） 絹本着色 浮世絵太田記念美術館所蔵 「鳥巷斎清線戯画」落款 「清線」朱文方印 白文印あり
• 「二美人図」 文化前期 絹本着色 千葉市美術館所蔵 「攀鱗斎廬朝」落款 「狂画」朱文長方印 「清線」朱文方印
• 「桜下美人図」双幅 文化13年（1816年） 絹本着色 出光美術館所蔵 「応需攀鱗斎画」落款 「廬朝」朱文方印 「攀鱗斎」白文方印
• 「雪見美人図」 絹本着色 光記念館所蔵 「水廬朝戯画」落款 「清線」朱文方印 印あり
• 「狆と芸妓図」 文政4年（1821年） 絹本着色 板橋区立美術館所蔵 「七十四叟 清線蘆調」落款 「狂画」朱文長方印 「鱗斎」白文方印
• 「美人戯狗図」 絹本着色 インディアナポリス美術館所蔵 「水廬朝画」落款 朱文方印、白文方印あり