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松野 親信(まつの ちかのぶ、生没年不詳)は、江戸時代初期の浮世絵師である。
懐月堂を称していないため、懐月堂安度の門人かどうかは不明であるが、その画風を伝えている。伯照軒、伯笑軒と号す。
宝永‐享保期に、肉筆浮世絵の美人画を描いている。安度や度繁らの作品に比べ、その豪放さは、温雅なものに変わっているが、より品格は上回り、この流派の絵師のなかでは、注目の一人である。
親信の作品に見られる、独特の零れる様な笑み、肥痩強く踊る様に軽やかな描線、そして色彩感に優れた優美な賦彩は、この時期の大家たちに伍しても、全く遜色ない。また、絹本に細密に着彩され、高額な画料を必要とすると思われるものが多く見られる。
作品については、「伯照軒」の落款のあるものと、「伯笑軒」の落款のものとでは、趣が微妙に異なり、後者「拍笑軒」の時の方が落ち着いた柔和な面差しを示している。これは、作画期による差異であると考えられるが、俄かに前後は決し難い。但し、前者の場合に作品が多く見られ、絶品もまた前者に多い。
また、「草紙洗小町図」に、「詮」の朱文方印が見られる。「立美人図」(MOA美術館所蔵)に「伯笑軒」の落款が見られる。