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ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(Tiziano Vecellio, 1490年頃 - 1576年8月27日)は、ルネサンス期のイタリアの画家。チチアンとも言う。
ジョルジョーネとともにヴェネツィア派の最盛期を代表する画家。安定した形体と、暖色系の豊かな色彩に秀で、多くの宗教画、肖像画を残す。代表作の『田園の合奏』や『ウルビーノのヴィーナス』は、近代の画家たちにもインスピレーションを与えている。
ヴェネツィア共和国の一部であった、ピエーヴェ・ディ・カドーレという小さな村に生まれた。生年は1488年から1490年頃とされるが判明していない。10歳になるかならないかの時期にヴェネツィアに出て、はじめモザイク職人のもとで修業し、次いでヴェネツィア派の初期の巨匠ジェンティーレ・ベリーニ、ジョヴァンニ・ベリーニ兄弟に師事した。
初期にはヴェネツィアの先輩画家であるジョルジョーネの影響を受けた。ジョルジョーネの代表作とされる『田園の合奏』、『眠れるヴィーナス』などは、夭折したジョルジョーネが未完のまま残していた作品をティツィアーノが完成させたものだといわれている。
フェラーラのエステ家、マントヴァのゴンザーガ家、ウルビーノのデッラ・ローヴェレ家などのそうそうたる名家をパトロンにもち、ヴェネツィアを代表する画家として活躍した。特にスペイン王家は国王フェリペ2世が神話画連作ポエジアの制作を依頼。これは10年以上にわたり断続的に描かれ続けた。
90歳近い長寿を保ち、晩年に至るまで宗教画、神話画、肖像画など幅広いジャンルの作品を多数残し、後世の画家への影響も大きかった。
『ウルビーノのヴィーナス』は、西洋絵画における裸体表現の歴史を考えるうえで重要な作品である。ヴィーナスのポーズは、先述のジョルジョーネ作『眠れるヴィーナス』を下敷きにしているが、ジョルジョーネのヴィーナスが目を閉じているのに対し、ティツィアーノのヴィーナスは挑発的とも思える視線を観者の方へ向け、背景も屋外から室内に変えられている。
『ウルビーノのヴィーナス』は、神話の世界の女神というよりは、肉感的な地上の女性のように見える。この作品は、ゴヤの『裸のマハ』、マネの『オランピア』などの源流と見なされている。西洋における裸体画の系譜は、神話の女神の理想化された容姿を描いたものから、現実世界の女性を描いた作品へと引き継がれていったのである。