刑部人

(おさかべ じん)

刑部 人(おさかべ じん 1906年5月5日-1978年3月8日)は、日本の洋画家。

栃木県下都賀郡都賀町(現・栃木市)生まれ。東京府立一中を経て、1929年、東京美術学校西洋学科卒業。1943年に文展無鑑査で出品となり、1946年、1947年に日展特選。

刑部は川端龍子に日本画を学び、東京美術学校の西洋画科の在学中に帝展に初入選した。画家として順調なスタートを切ったが、ヨーロッパ各地で起こっていたフォーヴィズム、キュビズムをはじめとする新しい芸術運動の波の中で他の多くの画家たち同様に一時的なスランプに陥る。

作風について悩んだ果てにたどり着いたのは、時流に惑わされず本来の写実中心の自分の道に帰ることだった。先輩の洋画家・金山平三との数々の写生旅行を経て、刑部は絵筆により細部を精緻に組み立てていく表現を超え、ペインティングナイフのバネの反動を利用して生乾きの絵具を重ねていくアクション・ペインティング風の独特の画風を生み出す。

  • 1906年 栃木県下都賀郡家中村大字家中に生まれる
  • 1918年 父の東京転任にともない12歳で上京。この頃から、大森・新井宿に川端龍子を訪ねるようになる
  • 1924年 東京美術学校西洋画科(現在の東京藝術大学美術学部油絵科)に入学
  • 1928年 第9回帝展に「友人の肖像」が初入選
  • 1931年 結婚し、東京都豊多摩郡落合町大字下落合(現在の新宿区中井)にアトリエを構える(吉武東里設計)
  • 1940年 芝浦の東京高等工芸学校(現在の千葉大学工学部)助教授となる
  • 1943年 新文展無鑑査となる
  • 1946年 第1回日展(日本美術展覧会)に「冬の軽井沢」を出品し、特選。金山平三と山形県大石田への写生旅行に同行
  • 1948年 第4回日展に「渓流」を出品し、特選
  • 1951年 日本橋三越にて第1回個展を開催。以後、計27回開催
  • 1958年 新世紀美術協会に参加、第3回新世紀美術展に「渓流(奥入瀬)」を出品
  • 1967年 日展審査員に
  • 1976年 70歳を記念し、日動画廊で「刑部人記念展」(銀座・名古屋)を開催、『刑部人画集』(日動出版部)を刊行
  • 1978年 腎不全のため死去。享年71。勲4等瑞宝章を受ける
  • 1979年 栃木県立美術館にて回顧展「刑部人展」開催、全216点出品
  • 1987年 日動画廊にて回顧展「刑部人」(銀座・福岡)開催
  • 2004年 栃木県立美術館にて「刑部人展 昭和日本紀行」展開催
  • 2007年 那須野が原博物館にて「刑部人 自然との対話・限りなき風景の体現」展開催(~2008/02)
  • 2008年 とちぎ蔵の街美術館にて「開館5周年記念展 アートリンクとちぎ2008 風景の旅人 刑部人展」開催

刑部人の作品所蔵美術館