菱川友房

(ひしかわ ともふさ)

菱川 友房(ひしかわ ともふさ、生没年不詳)は、江戸時代初期の浮世絵師。

来歴

菱川師宣の門人。元禄(1688年-1704年)期に主として肉筆画を残した。画風は師宣の様式を基調にした人物の表現に特色を見せている。代表作には「月夜弾琴図」が挙げられる。

この作品は、月明かりの下、座敷で女性が琴を弾き、少女が団扇で蚊遣りの風を送っているところを描いているが、庭先の柴垣際には萩、芒、竜胆、菊など秋草が茂っており、冴えた月影にも秋の気配が濃厚である。

この図案は単なる女性風俗にも見えるが、実は『平家物語』に登場する建礼門院の女房で宮中一の美女・小督の逸話を当世風に置換えた見立絵とされる。高倉上皇をめぐって平清盛の娘たちの恋敵になった小督が嵯峨野に隠棲し、それを上皇の命令を受けた北面の武士・源仲国が探し当てるという有名な嵯峨野の月夜のくだりを表現したものであった。友房もまた、落款に「日本繪」と入れている。

作品

  • 「聞香美人図」 紙本着色 出光美術館所蔵
  • 「月夜弾琴図」 絹本着色 ニューオータニ美術館所蔵

菱川友房の作品所蔵美術館